サンタルチア駅の右手の橋を越えるとバス発着所がありその奥の右手に「ピープルムーバー」というモノレールの始発駅「Roma」がある。
次の駅であるマリテイマ駅「Marittima」で埠頭に繋がっている。
ここから「MSC ファンタジア」旅行の始まりとなる。
駅前から無料のシャトルバスが出ているが、荷物の積み込み積み下ろしなどで待ち時間がかかるため歩いてもいい。
平坦路でスーツケースを押しても気にならない。
イケメンのお兄さんが道順を指示していた。
10分少々ほどで乗船事務所である。
種々の手続きをして、証明写真をとる。
これは寄港地での下船乗船時の人物チェックに使われる。
大きなものは一旦預けるが、これは自動的に部屋の前まで運ばれる。
「クルーズカード」をもらいいよいよ乗船となる。
乗船記念写真を撮る。
船内のフォトショップに貼りだされるの、欲しければ購入することができる。
部屋は内部側になり、5カ月前の申し込みだがすでに海側は予約が終了していた。
もし計画があるなら少なくとも半年以上前に手配しないと海側の部屋をとることは難しい。
内側といってもそこそこすばらしい。
我々は私と家内、娘と家内の姉の四名で2部屋である。
娘は言い換えれば老年グループのサポート役である。
娘は簡単な日常会話に不自由しないが、旅行を計画したのは片言の単語を並べて強引に英会話を押し通してしまう「ボス」つまり家内である。
私と義姉の二人はこれにくっついていくだけである。
これによると「日本語乗船説明会」が行われたらしい。
時間は「15:45」とある。
その時間、我々は乗船手続きをしていた。
ツアーではなく「個人手配」の客ということでクルーズの細かな内容までは知らないのが実情である。
「17:00までに乗船」と聞いていたのでそれまでに入ればいいと気楽に考えて、ベニスのドカーレ宮殿の裏側ツアーに参加して、ここにある牢屋に閉じ込められていた「カサノバ」の脱走冒険談を聞かされていたのである。
ファンタジアは午前中から乗船が開始されている。
よって我々が乗船したときは船上プールははしゃぎ声で満ちており、その周りはチェアーで日向ぼっこをする人で溢れ、そしてビッフェには品数豊かな軽食を楽しむお客がエンジョイしていたのである。
乗船時の記念写真を探したとき、それは撮影時間順に分類されており、早いのは「10:00」からである。
我々の写真は最後に当たる「15:30分以降」の区分に入っていた。
その区分帯はもっとも写真枚数の少ないところであった。
そんなわけで日本語説明会には出席できなかった。
実際のところそんな説明会が行われるなんてことは毛唐にも思わなかったのである。
もし、これからクルーズに個人参加される予定のある方がいたら、乗船は午前中から始まることを忘れないでいて欲しいと思う。
沖縄・北海道へのフェリーとは少々違うのである。
さて荷物が届いて必要なものをクローゼットや棚にしまう。
そして屋上デッキに出てみる。
オー、ベネチアが一望できる。
すごい。
もしこのデッキ15が階数に相当するなら、ここは地上40メートル位になるのである。
乗船して最初の公的な仕事がある。
避難訓練である。
棚に仕舞ってある救命胴衣をもって緊急時避難場所へ向かう。
我々はデッキ13、避難場所はデッキ6。
サイレンが鳴ると各デッキから出てきたすごい数の人波が階段を押し合いへし合いぞろぞろと降りていく。
もちろんエレベータは使えない。
デッキ6で救命胴衣の使い方の説明がある。
ひと昔の飛行機のようにそこそこに係員が散らばり救命胴衣の装着の仕方を説明する。
はじめに英語で次に日本語で行われる。
「エッツ」と思ったらそれで終わり。
英語の説明は当然のこととして分かる。
だがなぜ日本語の説明のみが行われるのだ?
イタリア語はないのか?
後で分かったことだが日本の団体は3組入っている。
阪急東京と阪急大阪、それにJTBである。
中身はリタイヤ組と新婚組になる。
しかし、だいたい団体というのは20名をリミットとしており、若干のオーバーをみても総数で100名もいない。
個人手配の日本人を合わせても百数十名で、全体からみると数パーセントにしかならない。
とすれば、肝心のイタリア語の説明はどうなったのだ?、と聞きたくなる。
ベニスはイタリアだろうに?
まさかイタリア人の乗客がいないというわけでもあるまいに。
他の言語はどうだ?
話を先回りすると前もって申し込んでいた翌日のツアーでは英語の参加者がなく、イタリア語とドイツ語のツアーだけになっている。
そしてイタリア語のツアー客の方がはるかに多かった。
避難訓練が終わって各部屋に戻るのが大変。
デッキ6からデッキ13まで7層ある。
階数でいえば7回。
マンションなら各階は階高3mで21mになるがここは天井が低い。
2.5mなら17m、2.3mでも16メートルはある。
行きは下りでよかったが帰りは上り。
ハーハー言いながら登っていく。
11階あたりからは足にくる。
ちなみにその後のツアーでは船外への出口は4階にあるため、そこからだと9層になる。
来ないエレベータを嫌って2,3回この階段登りやったが相当に辛いものがある。
なを、このエレベータ制御のソフトはとてつもなく年代もの。
エレベータそのものはやたらと豪華だが、通常のオフィスなどではまったく使えないシロモノ。
人が乗り込みドアが閉まる。
ここまではいい。
その後、外で待つお客が次のエレベータを待ってボタンを押すと閉まったドアが開いてしまう。
とすると、その横にきたエレベータは隣にドアが開いて止まっているエレベータがあるため、その階では止まらず素通りしてしまう。
ドアが開き切って、それから閉じてやっと動き始める。
いらぬ時間のロス。
このエレベータにも隣のエレベータにも乗れなかったお客はイライラがつのってくる。
昔、エレベータが一台か二台のときはこの制御法でよかった。
数台が並列している今日、こんな制御はどこにもない。
ところがどっこい、それがここに生きているのである。
通常ならドアにセンサーを取り付け、一度しまったら開かない用にして、動きださないといけない。
ドアセンサーがOFFになれば、横のエレベータは止まってくれる。
2008年建造の豪華船はハード的にはハイスペックだが、エレベータ・ソフトは数世代前の時代遅れといったところ。
三、四十年は遅れていると見ていい。
多くの場合私はエレベータは使わなかった。
それができたのが泊まったのがデッキ13で、ビッフェはデッキ14にあり、階段1つの昇れはそれでよかったからである。
下の階から来る人はエレベータに頼ることになるが、このエレベータには苦い思い出を抱くことにになっただろう。
ついでに述べておくと、部屋番号は数字5桁で示される。
我々は13階なので例えば「13013」という具合になる。
頭の2桁がデッキ番号になり、後ろの3桁が部屋番号になる。
ところがはじめのうちはよく迷う。
いくら探しても部屋がないのである。
理由は簡単。
部屋は左右にあるため、例えば左側にあるのに右側の廊下の並びの部屋を一生懸命探すことになる、というわけである。
廊下の雰囲気は左右ともまったく同じ。
常識的な発想なら左右どちらの廊下に位置する部屋かの判別がひと目でわかるような形にするはずである。
進行方向右側の廊下の部屋なら「13R013」となり、左側に位置するなら「13L013」といった風なる。
あるいは現在、赤系統で統一されている廊下の絨毯を、右の廊下は赤にし、左は青系統にするといった区別をしてもいいはずである。
でもここではそういった心遣いはまったくない。
お客の立場になって考える、あるいは目でみる視点というのはここでは欠けている。
まあ、そのうち慣れてくると、左右の判別が無意識でわかるようになるが、はじめのうちは迷う。
3回程迷って、4回目からは自動的に自分の今いる位置がわかるようになり、間違えることはなくなった。
自動的に分かるようになる、というのはちょっと言い過ぎで、常に左右を意識して行動するようになる、と言ったほうがいい。
訓練が終わるとベニスを出港する。
残念なことにいそがしさに取り紛れて去りゆくベニス(ベネチア)を見損なってしまった。
ウイキペデイアで「MSC ファンタジア」を検索してみる。
『
MSC ファンタジア(MSC Fantasia)は、MSCクルーズが所有・運航しているクルーズ客船。
MSC ファンタジア級の1番船で、竣工時はMSCクルーズ最大の客船であり、かつヨーロッパ船主の所有した客船としても最大であった。
2008年12月10日、STXヨーロッパ サン・ナゼール工場で竣工。
船価は約5億ユーロ。
12月18日にナポリで行われた命名式にて、女優ソフィア・ローレンによって命名され、12月20日より地中海クルーズに就航した。
その後、同型の2番船が2009年、3番船が2012年、4番船が2013年に竣工した。
総トン数 137,936 トン
船客定員 3274名(最大 3900名)
乗組員 1313名
』
さてさて旅の楽しみは夕食。
特に初日のデナーは期待で胸が膨らんでいる。
どんなすばらしいイタリア料理が出てくるのだろうか。
これほどの豪華船なら星クラスが望めるかも?
なかったことにしてツーと通りすぎてもいいのだが。
日本の名言「沈黙は金」なのだが、と言いながら書くということは、本当は書きたいのかも。
こうなったら正直破れかぶれで書いておく。
ファンタジアのデイナーはひどすぎる。
「ひどい」のではなく「ひどすぎる」のである。
イタリアの料理は皆おいしくてまずいのはないと言われている。
実際そうだ。
今回の旅行でベネチア周辺で4回デイナーを摂った。
そのどれもがおいしかった。
そのうち2つはベネチア本島ではなく郊外の地元民が集うような大衆レストランだった。
だがすこぶるの味であった。
納得できた。
もしこの原則を覆すものがあるのならそれはスーパーファンタジックな船「ファンタジア」の料理といってもいい。
オードブルから締めのアイスクリーム・デザートまでフルコースすべてがマズイ。
どこかにうまいのが一つはあってもいいのだがそれがまったくないのである。
どうマズイかというと、
冷凍食品が出たてのころのパックからとりだし、温めたと同じ味のシロモノ
だということである。
この感触が前菜からメインへ、メインからデザートまで続くのである。
耐えられないマズさに辟易する。
私だけなら好みもあろうが、他の三人も仰天である。
誰ひとりとして、頭を縦にふるものはいない。
いわく
『ベニスでまずいレストランの筆頭はファンタジア』
で意見が一致する。
ただ、このレストランで食事をするとき、船はベニスを離れている。
ということは
『アドリア海の黒星レストラン、ファンタジア』
となる。
戦うコック、海の一流料理人、「サンジ」の登場を願うばかりである
なを、今日は初日なので服装の規制はない。
なを、ファンタジア料理の名誉のために附言しておくと、ここのビッフェは最高である。
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